| 第三章 身体（一） 自分の身体が随分と動くようになってきた。とは言っても、まだまだ改善しな ければならない事があったのは事実である。 その手始めという訳ではないが、巻き爪があった。昔から巻き爪がひどかった のだが、店をはじめてから太ったせいもあってか、完全に爪が皮膚に食い込んで いた。だから、当時丸５年近くもそんな状態が続いていたものだから、私の足の 爪を見た人は、誰もが顔をしかめたものだ。 両足、親指の両サイド…、計４ヶ所が全て食い込んでいた。初期の当初は何を したら良いのか分からずに、そのまま放置されていた。しかし、歩くのも苦痛に なっていく中で、あるテレビ番組が救いになった。 小さく丸めたガーゼを爪と皮膚の間に入れて、空間を確保することによって、 皮膚に食い込むのを防ぐやりかたである。それを見て、私はガーゼを入れた。し かし、思った以上に食い込んでいる爪は、それだけでは空間を作れなかった。仕 方が無いので、ティッシュを折りたたんで空間を確保することに成功していた。 それでも、ひどい時は血だらけの親指になってしまい、靴下を脱ぐにも勢いよく とらないと、苦痛で顔をしかめた。 再び運動をするようになっても、その方法を続けていたために、あまりにも爪 の調子が良くないと、練習を休みこともあった。 けれども、このままでは良くないと思った私は医者を捜すことにした。 インターネットを使い、何ヶ所かの病院の手術例などを見ながら、どこにする べきかを捜した。そして、東京を少し南下したあたりの病院を尋ねた。でも、爪 などに悩む方は多かったらしく、もし予約をしても手術は２〜３ヶ月先になると いう。それほど待っている気にはなれなかった。しかたなく、新宿へと出向き、 病院へと足を傾けた。 「ガーゼを入れている人は見たことあるが、ここまで入れているのは見たことな いね」形成外科医の第一声であった。そして、状況からいって、手術する以外、 完治する方法はないと言う。でも、それは自分でも望んでいたことであった。 ２００３年１月。初詣に行った時に食べた物で食中りを起こしてから数日経っ た６日に、手術を行うことになった。 |