| 第四章 紆余曲折（一） 巻き爪の手術が無事終了して、練習を再開した頃はまだ寒く、練習をしていて も汗がなかなか出ない。とはいえ、普通の人よりは当然のように汗をかいている のだが、夏場と比べると、対した量ではない。 体重はこの頃、安定してきていた。平常時で６０キログラムを前後する。汗が あまり出ない時期といっても、時には５８キログラム台に突入することもある。 しかし、その体重減少に比例するかのようにスタミナがついてくれれば一番良い のであろうが、そうもいかない。まだまだスタミナのロスが大きい。 何とかしなければと思いながらも、行動に移せない弱い自分がいた。せめても と、思い立つところもあるのだが、なかなか前に進まない。もっともっとやる事 があるはずだと…。 ジムとして、初めてのプロ選手の試合があったものこの頃であった。 私の通うボクシングジムは、京浜東北線、東十条の駅を降りてから徒歩１０分 とかからない距離にあった。会長は、業界では有名で、第４８代日本バンタム級 チャンピオン「クラッシャー三浦」である。その後、トレーナーとして「エディ タウンゼント賞を受賞している。第１３代ＷＢＡ世界Ｓ・フライ級チャンピオンで あるセレス小林選手も三浦会長の育てた選手である。 ジム開設から約１年でプロボクサー９名…。かなりのペースで選手が増えてい る。その中に何とか入りたかった。しかし、ジムにくる前にフィットネスで言っ ていた６０キログラムという体重にやっとなったばかりの自分では、まだまだ、 そんなことを言ってはいられなかった。 年度末ということもあってか、仕事上のやる事が多くなった。「彩の国カクテ ル倶楽部」の仕事もその中の一つであった。この時期は、総会、会員更新などの 諸業務に追われる。それでも極端にたいした問題はなかった。昼のボクシング、 夜の営業。その合間になんとかなる事であった。 ２００３年度末、こんなに試練が待ち受けているなどと自分ではわからなかっ た、２８歳である。 |