第四章   紆余曲折(五)
 背中が治り、走ることもできるようになった。それまでは痛みが酷くてどうに
もならなかった。下手すれば階段の上り下りの振動でも息を呑むほどであったの
だから、いかに痛みがあったか、それなりに想像して頂けると思う。
 すっかり健康診断に行く時期が後れてしまった。でも、それはそれで良かった
と思える。運動を再開後、平常時の体重でも59キログラムをキープできるよう
になってきたのだから。そして練習終了後、57キログラム台に入ることもあっ
た。随分と痩せたと思い出したのは、この頃ではなかろうか。
 最初にフィットネスに通いはじめた67キログラムのことを考えると、時間が
かかったとはいえ、10キログラムの減量に成功しているのである。しかも、リ
バウンドは勿論、まだまだ殺ぎ落とせる部分があることも自覚できている。更な
る体重減の為に私の意識は高まった。
 21歳で、現役ボクサー(一戦しかしてないくせに…)の頃は57キログラム
ぐらいだったはずである。それが平常時であったとしたら、あと2キログラムの
減量で、当時の身体を取り戻せる、その思いは練習を一層激しいものへと変えて
いく。そのお陰もあってか、少しづつであるが、体力が戻ってきているのもわか
るようになってくる。
 さて、いいかげん、身体検査に行こうと思っていた。ジム側からは、どんな結
果であれ、プロテストを受けることを了承してもらっている。だからこそ、その
準備を自分自身でしなければならないのである。
 指定病院へと出向き、身長、体重、視力、聴力、血液、CTスキャン、などの
項目をこなして最後に医師の診断を受ける。
 CTに怒られたのは、多分、私くらいであると思う。頭を輪切りに撮影するた
めに、円形の機械の中へと吸い込まれるように入れられる。わざわざ眼をつぶる
こともないと思って、ぐるぐると回る機械を見ていたら、急に機械の外へと出さ
れてしまう。何かと思ったら、「動かないでください」って機械音に怒られてし
まい、再び機械の中へと入る羽目になってしまった。今度ばかりは眼をつぶって
いました。動いたのかなぁ、本当に動いたのかなぁ…。まあ、仕方ないか、それ
にしても機械に怒られるなんて。
 そして、昨日、なぜか、飲まされる羽目になってしまったので、体重が60キ
ログラムを超過している。ひえぇ〜。びっくりしてしまったが、まあ、当日のテ
ストには影響ないとのことなので、あまり気にせずに身体検査を終えた。
 痛かったのは、検査なので保険が利かないという点であった。
 2003年9月。プロテストの申し込み準備を済ませた。気合を入れなおした
月であったことは、言うまでもなかった。

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