| 第６章 何とかなる（二） ２００３年、最後の日は、例年通り、仕事をしていた。最終日ということもあ って結構店は賑わう。忙しいのが嬉しい日でもある。そういえば、前年には、店 を終えて、初詣に行った時に、食中りを起こしたっけ…と回想していた。 けれども２００４年の年明けは、もっと酷かった。 今までに味わったことにない痛みに襲われる羽目になった。 「痔」である。数回の経験はあるのだが、こんなに酷いのははじめてである。 結構病名を聞いて笑う人もいるが、なった事のある人から言わせてみれば、病状 を知らずに笑うなと怒りたくもなる。まあ、誰もが発症しやすい病気であるから そのうち痛みを知る人もいるであろう。 今までは、市販の薬を飲めば治っていたのだが、今回はそうはいかなかった。 歩くことは勿論のこと、立つことも、寝ているのでも痛い。病院へと正月早々に 行くものの、治る気配はなかなかなく、店を休んで、寝たきりの日々が続いた。 経過が見えない状況なので、痛みが普通の状況とは異なって感じられる。 出口の見えないトンネルほど、不安になるものはない。 まだ、痔であるから、治ることは治る。それがわかっているからいいようなも のの、これが、治るか治らないかわからない病気であれば、苦痛と逃れるために 死にたくなるという気持ちもわからなくはない。病気を苦に、自殺する人は、日 本でも後を絶えないという。 ２週間経過すると、少しは歩くことができるようになるが、まだまだ辛い。痛 みはさほどなくなったとはいえ、立ち仕事は堪える。なんとか仕事ができるよう になっても、運動となると怖い。下手に運動をして、治りかけが酷くなってしま うということがないようにと、自粛していた。 普通、プロテストの申し込みをしてから、３〜４ヶ月でテストになる。１０月 には提出しているから、遅くとも２月であろうと思っているのだが、ジムに数回 連絡をとっても、まだ日程の発表がないという。こちらにしてみれば願ったりで ある。練習どころか、まだまともに運動もできない体なのだから…。 一月は運動をしないかわりというわけではないが、病状的にも悪いと言われて いる酒を口にすることはなかった。そのせいと、まるっきり運動をしていないか らなのか、筋肉が落ちてしまったのかわからないが、体重が再び下降線をたどっ た。年末に平常時で５７キログラムまで落ちていた体重が５６キログラムまで減 ってしまった。きつい年明けを味わい、何とかテストに間に合うことが判り、ま あ、何とかなるさと開きなおった２９歳、２年連続の体調不良スタートであった。 |