| 第７章 プロテスト（二） ４階の控え室へと降りると、数名のテスト生がいた。何回目になるのかわから ないが、余裕のある表情を見せる者もいれば、こわばった表情の者もいる。私自 身は余裕なのか、年齢を重ねてきたせいなのかはわからないが、落ち着いていた。 １３時半を回った頃だろうか、会長と同ジムから一緒に受けることになってい る選手と話をしていると試験が始まる旨を、ブルーのシャツに身を包み、蝶ネク タイをしているレフリーが告げた。 １回以上受験をしている人は、筆記試験をすることがないので、そのまま身体 測定へとまわされる。二番目に並んだ私は、所属ジム、氏名、体重、右構えを告 げ体重計へと乗ろうとした。ここでアマチュアの経験がある人は、それを伝える のだが、プロ経験も言わなければならなかったらしく、「経験者だろう！」と突 っ込みを入れられてしまい。それを今一度告げる。体重計にのる、先ほど５４キ ロと言ったのは良いが、実際に体重計に乗らなければわからない。体重計は大き な物である。本当の軽量に使われるものだ。 「５４キロ」とレフリーに言われてほっとした。この体重だとしたらスパーリン グの順番は早いほうであろうと、勝手ながら思っていた。そのまま、ドクター検 診へとまわる。一度、テストを申し込む時にちゃんとした検査をしているから、 おおまかなものである。その時のドクターの言葉に思わず答えながらも、笑って しまった。 「すごい髭だねぇ、どのくらいで伸びるの」「まあ、１ヶ月半もあればそれなり に…」なんて会話しているんだろうって、お互いに思っていたのだろうが…。 短パンに履き替え、いつも使用しているリングシューズを履く。何だか紐をい じっているだけで嬉しくなってしまう。テストだよテスト…。自分の中で何度と なく、この場にこれた事を嬉しく思ってしまっている。その頃、やっと筆記を終 えた選手が戻ってきはじめた。私は先に４階の控え室から５階の会場へと上がり、 バンデージを巻いていた。一週間前くらいに練習時に痛めた左拳、中指の付け根 の傷を気にしながらも、グルグルと巻いたバンデージを数回、手の平へと叩きつ ける。 １３時４０分を回り、数名がリングの上でシャドーボクシングをはじめだした。 |